リーは旧正月休暇で一週間あまり台北の自宅で過ごすことになっていた。
長男の彼は、両親が援助して購入したマンションで暮らしていた。そこから会社までは車なら3分ほどの距離で、マンションと会社のちょうどまん中辺りに彼の両親が暮らす実家が位置していた。バス通勤の行き帰りの際、道路際に建つレンガ色の彼のマンションを見ることができ、毎日私は16階建てのそれを仰ぐように眺めた。
約束通り、帰国後彼は電話をかけてくれた。携帯に出た番号が彼のものでなく、実家のそれである時があり、私はすかさずメモに残したりした。リーに関する情報なら何でも得たくて仕方なかった。そして、私はもう、後戻りできないところまで来てしまったことに気づいた。
旧正月休暇の中日あたりに、リーと会えることになった。私は八里にいるシスターの厚意で、お正月その修道院に数泊おじゃまできることになっており、彼がそこまで車で迎えに来て、ドライブがてら送って行くと言われた。
八里の修道院へは、前回同様電車で行った。カトリック女子中学高校
と同じ敷地内にある修道院は、聖職者の宿舎、教会、礼拝堂、研修や宿泊施設などもあり、私にも簡易ながら清潔で十分広い部屋を貸してくださった。小高い丘にある修道院のシスターたちのそばでしばらく寝起きできる有り難い機会は、まさに神の恵みそのものに感じた。