今なお、その詳細は書くに堪えないが、台湾に渡り、半年も過ぎぬ間に起こったつらい出来事の存在を記さずして次には行けず、これのみ打ち明ける。
かつて同居していたあの妹女史のマンションの傍らに、カトリック教会と聖母公園があった。引っ越した先もそこから数百メートル離れただけだったので、ずいぶん、いや毎日そこを訪れた。洗礼こそ受けていないが、カトリック系高校で学んだ私にとっては近しく、安らぎを得うる場所だった。
誰も多忙で、自分の生活に手一杯ということがわかる私は、友人や知人につらい心中を聞いてもらう勇気が起きず、出入り自由な教会に行き、思い切り泣いた。泣きに行っていたと言う方が正しいかもしれない。
しかし、それでも自分を支えることが困難になり始め、ある夏の夜、8時を過ぎてから思い立ち、教会横の事務所に急いだ。誰かいてほしい、鍵が開いていますように、、、、、、 駆けるように急いだ。
果たして、その門は網戸だけが閉められ、中からは灯りが漏れていた。