主要な観光スポットへは、現地ガイドとバスが案内してくれたが、結構あるフリータイムも、一人黙々と歩き、あちこち巡った。日本なら秋色が濃くなる時季だったが、私が訪れた四日間はよく晴れ、日差しが強く、とても暑かった。あまりに暑いので、午後長く出歩くとつらく、面倒くさいと感じつつも疲れて一旦ホテルの部屋に涼みに帰ったりもした。冷房が利いた部屋で休んでちょうどよかった。
そんなに気温が高いのに、街を歩いていると、店先に丸鶏が何羽も吊り下げられている食堂はそこかしこにあった。
メニューを見ても、どんな料理か想像できないものが多く、まさか炎天下に吊られた鶏を使ったものには当たらないだろうと意を決し、注文してみた。私が少し迷っていると、店主が「これ、おいしいよ」と指差し、薦めてくれたのが三寶飯というもので、名前もいいし、それくださいと頼んだ。
三つの寶だもん、あの鶏はないだろうと高をくくったが、おじさんが速く慣れた手つきで、ぶら下がった鶏を使い込んだまな板に下ろし、ダッダッダッと骨もろとも切り裂いた時には血の気が引いた。
やっぱり要りませんとも言えず、お弁当にしてもらった三寶飯を提げて、沈む気持ちを持て余しながらホテルに帰った。